”アート”と”’アーツ”の定義
私とアーツマネジメント
ブログに書きたいことが日に日に溜まり、下書き状態で次の日を迎えるというのが続いています。基本的に自分が気になったことを書くのを目的としていますが、アメリカの大学院でアーツマネジメントを学んでいるからこそ発信できることを中心に書いていきたいのと、日本で少しでもアーツマネジメントという分野に興味を持っているひとが、この世界をすこしのぞき見できるようなブログにしたいと思っています。私自身が興味を持ち始めたのは5年くらい前でしたが、欧米との文化や認識の違いのせいか、一つの学問として情報を集めるのは苦労しました。「経営」ではあるものの、予想していた以上に哲学的で、ありとあらゆる知識を要することにようやく気付いたのです。日本を含め、アメリカやフランスなどの社会学者や文化人類学者の論文を読み始めたのがきっかけで、ようやく一歩踏み出せたかなと感じています。
私が「人類学」という学問を認識したのは、2012年の夏でした。ニューヨークに1か月ほど滞在していた時に知り合った友人が、大学で人類学を専攻していて、1人旅をしながら博物館めぐりをしていたのです。年下だけど、熱心に調べものをしていたりアクティブに勉強しているのをみて、かっちょいいなーと思ったものです。
それから、数年後に芸術人類学・文化人類学という学問が存在することに気づき、ちょこちょこ記事を読んだりするようになりました。
アメリカの大学に留学して、よかったなーと感じることは
①知らないことが無限にあるということに気付けたこと。
②バラバラの知識がいきなりつながって、見えている世界が変わってくる瞬間があるのを知れたこと。
日本にいてもこれらを得ることはできたかもしれないけど、異国の地で偶然出会った人々・見たもの・聞いたもの、そして感じたことは、他の人とは違う個性として自分の中に根付くんじゃないかなとおもいます。いまはインプットの連続ですが、アーツマネジメント業界で仕事をしていく上で、自分なりの考えを確立していくのが目標です。
ところで、アートとアーツって。。?
本題に入るまでかなり長くなってしまいましたが、「アート」「アーツ」の定義についてお話したいと思います。
アーツマネジメントについての情報を集めようと思ったときに、ほとんどの日本語の記事やブログでは「アートマネジメント」と記されている。読んでいる限り、アーツマネジメントのことを言っているのだなということが多いですが、海外で勉強をしたり仕事をする場合は違いを理解しておいた方が良さそうです。
オクスフォードの辞書を引用すると、
- art [mass noun] the expression or application of human creative skill and imagination, typically in a visual form such as painting or sculpture, producing works to be appreciated primarily for their beauty or emotional power
- (the arts) the various branches of creative activity, such as painting, music, literature, and dance
アートは、人間の創造力や想像力によって表現・活用されたもの。主に絵画や彫刻など目に見えるもので、その美や感情的な訴えを感じてもらうことを目的としたもの。
アーツは、創造的な活動がそれぞれの分野に枝分かれしたもの。絵画・音楽・文学作品・ダンスなど。
この他にも定義については色々な議論が行われていますが、アートは美術の授業で作るような作品で、アーツは音楽やダンスなど様々なジャンルの芸術を含む時に使われると認識しておくのが良いと思います。
★「ネットTAM」(アートマネジメント総合サイト)や日本アートマネジメント協会(英語表記ではJapan Association for Arts Managementとなっている)でもアートと訳されているため、ややこしいですが日本では「アートマネジメント」として扱われるのが主流のようですね。
冬の嵐"Riley"
3月1日から、冬の嵐が私のいる地域へ来ていました。
日本では台風に「1号」「2号」と名前を付けますが、こちらでは名前を付けます。今回の嵐は「Riley」と呼ばれているそうです。
3月1日の夜、授業から帰宅すると雨が降りはじめました。その時は、嵐の予報に気づかず、夜中3時頃にとてつもない風の音と共に目を覚ましました。明け方5時頃、学校からアラートが来て3月2日は昼の12時から学校を開けますとの連絡が。
しかし、朝になっても嵐はひどくなる一方で学校は一日中閉鎖になってしまいました。その日は、たまたま担当していたイベントがあったのですがキャンセルになり、家で待機することに。仕事や宿題をする良い機会だと思い、やり始めたところ「停電」。。
天気も悪く、家の中がすでに暗くなっているのに・・と思いながら様子を見ていました。しかし一向に電気がくる様子もなく。しょうがないので電気の通っている地域からデリバリーをたのんでキャンドルライトの中で夜ご飯をいただきました。
携帯の充電も切れてしまい、夜9時には寝ることにしました。
3月3日、今日は朝6時に家を出て仕事へ。
家は停電状態が24時間続いていますが、イベント会場は幸い電気があるのでなんとか生きていけそうです笑
2月のまとめ
2月も終わったので振り返ってみたいと思います。
大学院生活2学期目に突入したということもあり、生活ペースも落ち着いて予定を立ててしっかりやることをこなせた月だと思います。
アーツマネジメント
日々、芸術の世界で何が起きているのかをチェックするという習慣がつきました。もとは授業でシェアできるネタを探そうと思って始めたことですが、音楽だけでなく様々な芸術分野の動きを知ることで幅広いアイディアを得ることができると感じています。
読んだ本の中では、特に下記の3つが印象に残りました。
"Art Worlds"/Howard Becker
"Art as Experience"/John Dewey
"The Gift"/Lewis Hyde
社会学の観点で芸術について考えたり、現代人の芸術に対しての価値観について考えるきっかけとなりました。日本語の本を探していたところ、中沢新一さんの「芸術人類学」という本が気になったので、さっそく読んでみようと思っています。
中沢さんは、いま多摩美術大学の教授をしているようで面白そうな本をたくさん発見。それに加えて、中州産業大学とほぼ日刊イトイ新聞のコラボで行われたトークイベントが連載となって残っているのでそれも早くチェックしたいなとワクワクしています。
たくさんの知識をインプットする分、記録として・新たなアイディアを生む工程としてどんどんアウトプットもしていきたいです。
演奏
ジャズバンドで、ジャズフェスティバルに参加しました。
高校生のバンドとも交流することができて、ゲストミュージシャンのワークショップを見学したり、リハーサルを見に行ったりして、あらためてジャズ教育が発達しているなと思いました。
3月はコンボでのギグもあり、 たのしみ。
プライベート
休みがあれば、すかさず美術館や博物館へ行きました。たくさんのアートに触れることができ、毎日が刺激的です。
そして、今年は予想していたよりも暖かい日が多く、2月なのに外を散歩がてら歩いたりトレイルを走ったりしても 心地よいです。
今月はこんな感じでした。
ではまた!
お休みの日の過ごし方ー2月編ー
2月は密かに目標を立てていました。
①週に1回以上ワシントンDCのスミソニアン博物館・美術館へ行くこと。
②ケネディーセンターの無料コンサートへ行くこと。
お休みの日には朝一で博物館なり美術館なりに行き、人があまり居ないうちに鑑賞できるようにしていました。なぜなら、お昼過ぎになると平日も休日も関係なしにアメリカ全国からスクールトリップで来ている学生や観光客で賑わってしまうからです。
そしてなんといってもスミソニアンの良いところは、入場が無料なところ!
こんなに豊富な作品や資料を無料で鑑賞できるなんて驚きです。
私の一番のお気に入りは、国立アメリカ歴史博物館。
私のお目当てはいつも、アメリカの歴史の一つ「ジャズ」の資料館。実はここの博物館には、専属のジャズバンドがあって音楽の歴史を形としても残していこうという取り組みをしているのです。
このバンドは「Smithsonian Jazz Masterworks Orchestra」といって、毎回テーマを決めて定期的にコンサートを行っています。一番印象的だったのは、博物館が所有しているジョンコルトレーンというテナーサックス奏者がかつて使っていた実物の楽器を使用して行ったコンサートです。
所蔵している資料の数だけでも驚きなのに、こんなに素晴らしい取り組みを行っているこの博物館が私の一番のお気に入りです。
2つ目の目標、ケネディーセンターでの無料コンサートも毎週チェックして足を運ぶようにしました。ここは大きなコンサートホールですが、「Millenium Stage」という若者向けのプログラムを週一で展開しています。自分でコンサートを選ぶとジャンルが偏りがちですが、このプログラムではシアターからゴスペル、クラシック音楽など様々なパフォーミングアーツを鑑賞できます。
街のなかには緑も豊富にあり、歩いているだけでリフレッシュできました。
ワシントンDCというこの街で、できるだけいろんな芸術に触れて授業での学びに役立てていきたいなと思っています。
アメリカで定番のガールスカウトクッキー
こちらでは、定番のガールスカウトクッキー。
女の子たちが、資金を集めるために大量のクッキーを売る季節です。
いつもなら、見向きもしませんが(笑)
クラスメイトの娘さん2人がガールスカウトをやっているため
授業後に2箱買いました。
私が買ったのは、シンプルなチョコクッキーとミントクッキー。
昔おすそわけしてもらった時はおいしいと思わなかったけど、
食べてみたら素朴な味だし、悪くないかも・・と思ってしまったのは
アメリカの舌になってしまったということ、、?笑
同級生の娘さんは、去年は1500個売ってiPad miniをもらったそう。
今年は2000個以上を目指してディズニーの券をもらうのが目標だと
張り切っていました。
日本では子供たちが赤い羽根募金を募っているのを見たりするけど、
こういうチャリティーの活動が活発なのもアメリカの文化の一つだなぁと
おもいました。
Art as Experience
2018年最初の半年は、アートと社会の関係性・アーティストや非営利の団体がどのような立場で活動できる世の中であるべきなのかに注目して、本を選んでいきたいなと思っています。
もちろん、アート関連以外にも興味のある人類学・世界の宗教・コミュニティ形成など、沢山のトピックを拾いながら色々な視点で芸術について考えていきたいです。
今週読んだなかで一番印象に残ったのはJohn Dewey著書の「Art as Experience」です。日本語でも「経験としての芸術」という題名で出ているみたいですね。
John Deweyはアメリカの哲学者。プラグマティズム(経験不可能な物事の真理を考えることはできない、という考え)を代表する思想家と言われています。1919年に来日しており、日本の大正自由教育を代表する玉川学園・自由学園などは彼の影響を受けています。
(自由学園の明日館へ見学に行ったことがあるのですが、池袋にあるにも関わらず開放的で素敵なデザインでした。今は重要文化財に指定されています。また行きたい・・!)
この本は、プラグマティズムからきている「経験」に重点を置いていて、どの芸術作品もアーティストから生み出され、オーディエンスの目に留まり、そしてどんなプロセスを経てどんな反応が得られるのか。すべての作品において、この実験的経験が必要だと主張しています。
一つの経験を生み出すことは、それ自体が美(esthetic)を生み出すことなのです。
この本が書かれたのは1934年のことですが、彼の考えをめぐって最近でも芸術の在り方についての議論が絶えません。彼にとって、芸術を鑑賞することは受容的な行為でもあり、生産的な行為でもあるのです。ということは、美術館のように説明文と共に作品を陳列してオーディエンスに見てもらうというのは一連の行為の障害になり得るのです。
しかし、美術館もあらゆるコミュニティーへの開けた場として重要な役割を果たしており、それによって彼のいう「経験」の機会を提供することもできます。
最近では、入館者が作品とセルフィーを撮ってSNSにアップすることができたり、体験型の美術館があったりと、Audience engagementも発展しつつあります。
今後も美術館や他の芸術団体を運営するうえで、いろんなアプローチが生まれていくと良いなと思います。
留学すべき?旅行じゃだめ?ー目的と手段
最近、留学に興味がある・大学院へ行くか迷っている方からの質問で
「留学することや、大学院まで行くメリットはなんですか?」
と聞かれることがあります。
人によって意見は違いますが、私がどうやって進路を決めてきたかというお話を書きたいと思います。
(写真は記事には関係ない、前に食べたお肉です)
メリットのとらえ方
まず、日本人が使うメリットという言葉は「得すること、利点」という意味だと解釈していますが、私は留学によって有利になったり、得をするということを期待して決めたわけではありません。(これは、どちらかというとAdvantageという英語に当たるのかなと思っています。)ちなみに、英語圏で使われているメリットという言葉には「価値、長所、美点」という意味が含まれています。
もちろん留学によって得るもの、留学の利点はたくさんあります。
現地の生活を体験できる・生の英語が聞ける・異なったバックグラウンドを持つ友達が増える、など挙げていけばキリがありません。
手段の一つとしての留学
しかし「これらの利点を得るために留学しよう!」と考えてしまうと、それ自体が大きな目的となってしまうのです。
英語の勉強を例にしてみると。。
目的「英語で好きな本や映画を楽しめるようになりたい、一人で海外を旅行したい」
↓
手段「海外で英語の勉強をする、英会話スクールに通う」
という風に具体的な目的、手段がある場合はやるべきことが絞られてきます。
しかし、多くの人には海外の語学学校で英語を学んだり、英会話スクールに行くことが目的となってしまって、あまり効果が見られなかったということが起こりえます。
私の中で勉強・進学というのは目的ではなくて手段でした。
本場アメリカ人と同じ教育を受ける・アメリカでライブをする・アメリカのジャズの教育機関やNPO団体で働く、という目的を果たすために進学という手段を選びました。
そうすることによって、結果として専門分野に特化した経験をするとともに他の分野への興味も広がりました。
いま、留学を迷っているなら…
なので、留学そのものにメリットがあるか気にするよりも留学によって将来自分のやりたい事が可能になるのか・可能性を広げてくれるのかを考えることをオススメします。
もしも今の時点で"留学を終えて憧れのステージへ進む自分"が頭の中で描けなければ、自分の達成したいこと(目的)をもう一度考えて、それに留学が必要な手段であるのかを考えてみましょう!
旅行と留学
もう一つ頻繁に聞かれることは「旅行と留学どちらがいいと思いますか?」
という質問。
こちらも、目標と手段がハッキリしていると決めやすいかなと思います。
留学をすることの価値も、旅行することの価値もいくらでも挙げることができます。
旅行は、たまに行くからこそ新鮮な気持ちにしてくれて、観光も楽しむことができます。そして、旅行へ行くためにも仕事を頑張ろうという思いにさせてくれます。
一人ひとりのやりたいことに合わせて、留学のプログラムも豊富でどうしても留学で学びたいことがあるという人にはとことん良い機会になるはずです(^^♪