ゆるアーツジャーナル

ジャズ/アーツマネジメント/日々感じることを綴っています。

人種差別問題/ソーシャルメディアを通しての抗議運動について思うこと

日本でどの程度報じられているのか分かりませんが、今アメリカでは人種差別への抗議運動が過激化しています。この動きについては、私自身も考え方やSNSで出回っている情報について整理をしている最中です。でも、日を追うごとに全米で色んな事件が起きて沢山の人がそれぞれの主張を述べているのを見ていて、私も地球に住む一人の人間として正しい情報の収集と出来る限りの協力をしていかなくてはと感じています。

 

黒人のクラスメイト

アメリカで過ごした大学時代、クラスにはいつも何名かの黒人の生徒が居ました。今思うと、彼らはいつも黒人としての意見を主張している事が多かったように思います。私自身クラスでは唯一のアジア人+留学生であることがほとんどだったので、別格の意見として捉えられることが多かったけど(差別されていたわけではなく)黒人生徒も100%白人生徒と同じ立ち位置だったかというと少し疑問に思うところがありました。同じアメリカ人なのに、白人の生徒が多い学校ということもあってか黒人枠が作られていたような気がします。

 

アメリカの歴史

2019年の冬にピッツバーグのゲティスバーグに行きました。DCからおよそ一時間北へ進んだ場所です。アメリカに6年間居ながら、大学の授業以外でアメリカの歴史を学んでいなかったので良い機会だったと思います。その頃ちょうど岩波新書から出ている南北戦争の時代という本を読み、ゲティスバーグの戦いという映画を観て、現地では南北戦争史上最大の激戦が繰り広げられた地を目にし、リンカーン大統領の演説について学びました。

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南北戦争が終わって奴隷制度が廃止されたけれども、南北が和解したというのは実は黒人を犠牲にして南北の白人が和解をしたというべき。アメリカの州が分裂することは避けられたけど人種の対立というのは無くならなかったので、20世紀になっても大問題として発展したのです。

 

 ハッシュタグを使っての抗議運動は必要だった?

2020年5月25日、ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性のGeorge Floydさんが白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件がありました。この事件を受けて、アメリカの音楽業界がハッシュタグを用いた抗議運動への参加を呼びかけました。実際に「BlackOutTuesday」というハッシュタグは多くの人に支持され、私のタイムライン上でもかなりの数の真っ黒なスクリーンが流れてきました。

ここ数日、このハッシュタグに限らず過激な主張やニュースを目にします。もちろん、尊敬するミュージシャンや先生・友達がそれぞれの判断でシェアしているものなので否定はしませんが、個人的にはこのハッシュタグの運動をサポートすべきかどうか悩みました。SNS上で発言することにより、「自分はこの考えを支持します!」「自分はこんな活動をしてます!」と周りに主張できるわけですが、そんなSNSで簡単に発信できるからこそ、私はその行動をためらってしまうのです。

 

今回の件で言うと、この「BlackOutTuesday」というハッシュタグは「音楽業界の利益の大半はブラックアートによるものであり、黒人コミュニティーの努力や成功の恩恵を受けている業界全体は責任を持つべきだ。」という考えによって生まれました。もちろん、ハッシュタグを使ったソーシャルムーブメントは大勢にシェアされるし意味のあるものであったと思いますが、本当にすべきことはソーシャルメディアを一時的にシャットダウンすることではなくて、もっとインパクトがあって持続可能なことなのではないかと思うのです。例えば黒人コミュニティーを支援する団体に寄付金を送ったり、音楽業界の中でも問題視されているストリーミングサービスのサブスクリプションを解除したり、音楽業界の黒人の人々をサポートする方法は他にもあります。

 

「みんなが投稿しているから」という理由だけで真っ黒な正方形を投稿しても、皆が望んでいるであろう「人種差別のない世界」には近づけません。Raise Awarenessを目的とするソーシャルムーブメントも、「より多くの人に拡散する」だけではなくて「より多くの人が問題を身近に感じられるようになる/自分にも関係のある問題として考えられる」ような効果があれば意義のある運動になるのではないでしょうか。そして本当に現状を変えたいという想いがあるのならば、投稿する前に「本当に必要な投稿なのか?」を考え直して必要とされているサポートをして欲しいと思います。

 

 

私達にできること

SNS上でこの現状を目にするも、何を感じれば良いのか・何をすれば良いのか分からない人は沢山いると思います。私たちの住む地球上で起こっている問題として少しでも興味を持った人には、アメリカの歴史を知って今どんな事が起きているのかを見てもらいたい。そして、この動きは黒人に対する差別問題のみでなく地球に存在する全人類の人権に通ずる問題であることを意識して欲しいと考えています。

 

黒人ではない。アメリカに住んでいない。差別を目の当たりにしたことがない。

 

という人は存在すると思います。私も黒人ではないし、悪意のある差別を日々受けているわけではありません。とある記事には、「黒人である私でさえ、差別を100%してこなかったか?と聞かれたらなんとも言えない。」という声が書かれていました。差別というのは肌の色だけに関係することではなくて、性の違い・年齢・使う言葉など色んなカテゴリーにおいて起きていることです。でも、過去の歴史を見てみると現在強く問題視されている黒人に対する人種差別は特に酷いものであり、全世界の人々の意識が変わらなければ!と抗議運動が起きているのです。

これらの真実を知らないことは罪ではなく、少しずつでも知ることによって一人ひとりの視野が広がれば良いと思っています。

下記のツイッターのスレッドには、アメリカで起きた黒人差別の歴史的背景がまとめられています。英語が分からなくても、年号と写真を追っていくだけで人々が不当に命を失って抑圧されてきたということが見れると思います。

 

こちらのアカウントでは、「アメリカ(と世界)が目指すべき指針が書かれていたと感じたので、ぜひ日本語話者の方にも読んでもらいたい」という想いからオバマ前大統領のブログポストが翻訳されています。

https://instagram.com/p/CA7Oi7MD6Vo/

 

歴史に残る激しい対立が幾度となく起こっても、まだ存在する差別問題。これ以上人間が人間を傷つけるようなことが続いて欲しくない。他の国に住む人と簡単に連絡が取れるこの時代に、みんなが歩み寄って日常に潜む違和感を消していけたら・・と切に願います。国籍・人種・文化・言語の違いを互いに認め合える優しい世界になって欲しい。