ゆるアーツジャーナル

ジャズ/アーツマネジメント/日々感じることを綴っています。

芸術と政治①

芸術というのは私達の日常から遠く離れることもできるが、密接することもできる。人間の生活に関係のあるものだからこそ政治や社会の関心が芸術に大きく影響することもある。

私自身、ワシントンDCという政治都市に住むことでニューヨークやニューオリンズ、ロサンゼルスなどとは違う視点でジャズを含む芸術を見つめることが出来ているように感じます。今後、芸術と政治に関わることを少しずつ書いていけたらと思っています。

――――――――――――――――――

 

2011年の冬にジャズのプライベートレッスンを受けていた先生のスタジオで1枚の写真を見かけた。

 

それはエジプトのスフィンクスと先生のジャズバンドが写っていている写真。

「あれ、これって?どこかで見たことあるような。。」

と思っていると、先生が「ジャズトランペット奏者ルイ・アームストロングが1961年に外交政策の一環で訪れたエジプトにスミソニアンのツアーで行ったんだよ」と。

f:id:bebopcharlie:20190905011232j:plain
この写真についての記事 by Amro Ali

 私が見たことあった写真はこれ。初めて見た時には、スフィンクスと写っているイカした写真だな~くらいにか思っていなかったのだけど、この時代のジャズと政策について少し教えてもらってから、もっと勉強しようと決意した。

 

残念ながらジャズを使った外交について扱っている日本語の資料はほとんどみかけないが、2017年に発売された政治学者の齋藤 嘉臣氏による「ジャズ・アンバサダーズ 「アメリカ」の音楽外交史」はここで紹介しておきたい。

この本では、政治学の博士号を持つ齋藤 嘉臣氏が当時「ジャズ大使」と呼ばれていたジャズミュージシャンとその周りの社会状況について詳しく書いています。参考文献の充実ぶりでこの本の真剣さが伝わってくる。 

 

それに加えて「アメリカ音楽史 ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで」という本も政治や文化を交えたアメリカの音楽について学べるのでよかった。

 

せっかくジャズを大学・大学院まで学ぶのなら、学生達にはこういう知識を学ぶ機会もあると良いと思う。日本語での文献は貴重なのでジャズの歴史を学ぶクラスかなんかの課題図書にしても良いくらいだ。

 

スミソニアンのジャズバンドがエジプトにツアーへ行ったのは、ルイアームストロングが訪れた47年後の2008年。約50年経った今でも同じ音楽を通して交流の場を設けることができるのはすごいことだと思った。

当時のプレスリリースによるとジャズバンドはシンガー・スウィングダンサーと共にパフォーマンスを行い、加えてアメリカ歴史博物館のディレクターだったBrent Glassによるレクチャー「Shedding Light on American History」とジャズキュレーターのJohn Hasse によるレクチャー「Louis Armstrong: American Genius」も行われたようだ。

 

芸術は社会や政治と共に変化し、今まで積み重なってきたものなのだと考えさせられる。