Art as Experience
2018年最初の半年は、アートと社会の関係性・アーティストや非営利の団体がどのような立場で活動できる世の中であるべきなのかに注目して、本を選んでいきたいなと思っています。
もちろん、アート関連以外にも興味のある人類学・世界の宗教・コミュニティ形成など、沢山のトピックを拾いながら色々な視点で芸術について考えていきたいです。
今週読んだなかで一番印象に残ったのはJohn Dewey著書の「Art as Experience」です。日本語でも「経験としての芸術」という題名で出ているみたいですね。
John Deweyはアメリカの哲学者。プラグマティズム(経験不可能な物事の真理を考えることはできない、という考え)を代表する思想家と言われています。1919年に来日しており、日本の大正自由教育を代表する玉川学園・自由学園などは彼の影響を受けています。
(自由学園の明日館へ見学に行ったことがあるのですが、池袋にあるにも関わらず開放的で素敵なデザインでした。今は重要文化財に指定されています。また行きたい・・!)
この本は、プラグマティズムからきている「経験」に重点を置いていて、どの芸術作品もアーティストから生み出され、オーディエンスの目に留まり、そしてどんなプロセスを経てどんな反応が得られるのか。すべての作品において、この実験的経験が必要だと主張しています。
一つの経験を生み出すことは、それ自体が美(esthetic)を生み出すことなのです。
この本が書かれたのは1934年のことですが、彼の考えをめぐって最近でも芸術の在り方についての議論が絶えません。彼にとって、芸術を鑑賞することは受容的な行為でもあり、生産的な行為でもあるのです。ということは、美術館のように説明文と共に作品を陳列してオーディエンスに見てもらうというのは一連の行為の障害になり得るのです。
しかし、美術館もあらゆるコミュニティーへの開けた場として重要な役割を果たしており、それによって彼のいう「経験」の機会を提供することもできます。
最近では、入館者が作品とセルフィーを撮ってSNSにアップすることができたり、体験型の美術館があったりと、Audience engagementも発展しつつあります。
今後も美術館や他の芸術団体を運営するうえで、いろんなアプローチが生まれていくと良いなと思います。