ゆるアーツジャーナル

ジャズ/アーツマネジメント/日々感じることを綴っています。

文化政策について考える①

日本という国を知ってもらう活動

最近、ワシントンDCやバージニア州にある小学校に行く機会が度々あります。

特別授業として日本のことを教えるプラグラムをやっているのですが、いきいきとした子供たちが日本について知っていることを話してくれたり、素朴な疑問を投げかけてくれたりして、とても楽しいです。

 

何かを問いかけると、クラスのほとんどの子が手を挙げて一所懸命答えてくれるのをみると、関心してしまいます。

 

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私のインターンをしている団体のFBページからお借りしました。

 

また、日本語を話す機会が欲しい人のためのネットワーキングランチや、茶道・生け花・着物の着付けなどを習いたい人のための教室なども開催されていますが、日本という国に興味を持ってくれている人がたくさん居て、嬉しいです。それと同時に、自分の国の事をもっともっと理解して教えてあげられるようにしたい、という気持ちが強まります。

 

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日本に行った時に使える日本語を教えるコンテンツなどの作成もすることができて、とても面白いです。

というわけで、2018年前半はアメリカの文化政策について関わってきたので後半は日本側の活動に関わり、学んでいきたいなと思っています。

 

植物や木の観察

たしか、1年半前くらいに木の幹の写真を撮り始めました。

人間と同じように、表情が一つずつ違うのが面白いと思って観察を始めたのです。

最近気に入ったのが、こちら。

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結構スムースな表面で、蔦が絡まっている感じが良い。

最初はインスタグラムに載せていたのだけど、あまり見たい人は居ないだろうと思って写真を撮るだけにしていた。

最近他に発見したのは、こちらの実。

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全部同じところに生えているのに、色がちがう。

これは、そもそも種類が違うのか、順を追って色が変わるのかはよく分からない。

 

というような感じで、人にはあまり分かってもらえないような観察を日々楽しんでいます。

 

 

林檎摘みのあとに/Tasteのこと/Schwellenangst

今日は題名を見ただけじゃ、ナニコレという感じ。

 

学校は中間テストの期間で、テキストブックを読んでは論文を書いて‥という作業を繰り返しているので、日本語でランダムなトピックを書きたくなった。

 

After Apple-Picking by Robert Frost

まず、"林檎摘みのあとに"という詩のこと。

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 写真は、5年くらい前に林檎を摘みに行ったときのもの。結構お気に入り。

Robert Frost というアメリカの詩人が書いた詩で、「林檎摘みのあとに」というのがある。高校や大学の授業以外で詩に触れるということはあまりしたことが無かったのだけど、たまたま声に出してこの詩を読んでみたら凄く綺麗だと思ったし、不思議な感覚を得られたのでした。

授業とかで扱うと、何行目の意味は〇〇だとか分析をしないといけないんだろうけど、詩を読んだ時に生まれる感情とか伝わるメッセージとかは人それぞれだと思うし、この詩で綴られている情景をイメージするだけで豊かな気持ちになれる。

 

好みは人それぞれ

続いて、「De gustibus non est disputandum」という言葉について。

ある記事でこの言葉を見つけて調べてみたのです。どうやらgustusというのが「好み」というような意味。好みは人それぞれで、他人がそれに対して論ずるべきではないと古代のローマ人が言っていたようです。数か月前に読んだフランスの社会学者、ブルデューの本では差異化についてが書かれていたけど、その人の社会的位置は慣習行動とか趣味を構造化する。この社会的位置は文化的資本と社会的資本に影響されて決まる。

たまたま見つけた言葉だったけど、古代ローマの人も言っていたくらい全ての人は違う価値観を持っているし、その事を常に意識しながら芸術の現場に携わりたいと思った。

 

最近の趣味:ドイツ語

最近、Schwellenangstという言葉を知った。

特に理由はないけど、ドイツ語の絵本を読んでいる。

この言葉は、直訳すると「入口へ入る時に感じる、不安」のようなもの。

私の理解では、こんなシチュエーションで使う↓

歴史あるオペラハウスに行くことになった。少しはおめかしして来たのだけど、入り口に着いてみると、自分だけ服装があきらかに浮いていて「あれ?みんな凄いドレスアップしてるな。どうしよう、、、」というような感情らしい。

「気遅れ」みたいな感じかな?

 

すごいランダムなことを書いたつもりだったけど、結局どれも勉強していることに通じていたような。。

秋のおとずれ

インターン、授業、演奏の繰り返しで、気付いたら9月も後半に!

12月になるまでブログの頻度は落ちそうですが、ゆるく続けていこうと思っています。 

 

新たなインターンを開始!

夏の間はアメリカから発信する文化政策に関わることが多く、ジャズはもちろんアメリカの歴史や文化を通して、知識や体験を提供するお手伝いをしました。

夏のインターンが終わっても、アメリカ歴史博物館でお手伝いする機会があるのでこの縁を大事にしていきたいと思います。

 

そして、秋からは違うインターンを開始!

仕事においても日常においても新しい知識や人とのつながりを得ることは、大学院で勉強するようになってから特に感じます。

 

 

読書のアキ

私は時間に追われ余裕がないときにこそ、隙間時間に本を読みます。

一番最近読み終えたのは、日本語訳のゴールズワージーの作品、「林檎の木」

 

ページ数も少なくシンプルなのだけど、自然を描写するところや読者の気持ちまでを揺さぶるようなストーリーが印象的でした。

川端康成がこのお話に影響を受けて「伊豆の踊子」を書いたよう。(高校生の時に教科書で読んで、伊豆旅行へ行ったのが懐かしい◎)

 

図書館で "The Forsyte Saga"「フォーサイト家物語」を借りてきたのでたのしみ。原作の英語で読むと感じることも違うだろうし、解釈の仕方も変わってくると思うのでじっくりと読みたいと思います。

 

新しい曲 “Philer”

秋は、なぜか色んな感情が生まれる季節。

"Philer"という曲を作りました。題名として使っているPhilerというのは、実は単語として存在しません。

Philというのが、ギリシャ語の動詞で”love"という意味だそうで、それに"er"を付けてagentive nounとして造語をつくりました。

 

世に存在するものに対して、どんなものにも愛という感情を向けることができたら良いなという気持ちを込めています。

 

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仕事も演奏も全力で今学期を乗り切ります★

 

 

【ブラジルの博物館での火災】 世界中の博物館やコンサートホールが見直さなくてはならないこと

先週から秋の授業が始まりました。

 

本題には関係ないけど、家族が大阪と京都へ旅行に行ってきたようです。写真が送られてきました。

 

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中学生、高校生の頃は甲子園の野球応援に夜行バスで行き、太陽の塔の下でお弁当を食べていたのが懐かしい。

 

そして、台風や北海道での地震が心配です。
家族も、ぎりぎり新幹線に乗る時間を早めて東京へ帰ってこれたよう。

 

 

今日は締め切りが迫っている仕事があり、ブログを書いている場合ではないけど、ブラジルで起きた大きな出来事がアーツマネジメントに関係することだったので、思ったことを軽く書き留めておこうと思いました。

 

 

The Brazil museum fire is a warning to us all - The Washington Post

ワシントンポストの記事。ニュースというよりは、事件の背景を調べて考察している記事なので参考になると思いました。

 

9月2日の夜にブラジルの国立博物館で起こった火災。

 

死者は出なかったようだけど、博物館の展示物はほぼ全焼してしまったよう。

 

科学的、文化的遺産が消えてしまった。

 

何個か記事を読んで分かった問題点や思ったこと

  • 博物館は年間予算の12分の1しか受け取っていなかった
  • 2000万もの展示物を失う
  • 消防士が駆けつけても水が近くにない状況だった
  • 清掃員や警備員に給与が払えず休館に追い込まれることもあった
  • スプリンクラー設備がなかった
  • 経営側はリスクマネジメントをしていなかったのではないか
  • レプリカを展示して、実物はオフサイトに保管するのではなく、ほぼ全ての実物が博物館にあったよう

 

ブラジルの政治・経済情勢に詳しいわけではないけど、国立の博物館でさえ経営が大変なようだったので、この火災で更にダメージがあるのではないかと思う。

 

この火災事件の情報をもとに、各国の博物館は改めて自分の団体の建物のレギュレーションを見直したり、維持のための予算を見直したりすると思う。

 

ワシントンポストでも言われているようにどこの建物でも起こり得ることで、そんなことが起こってしまっては、知識も歴史も失われてしまう。

 

「デジタル復元」のためにウィキペディアが、焼けてしまった収蔵品の写真を集めようと、呼びかけを行っているようです。写真はあったとしても、実物には何物にも代えられない価値があるし、改めて博物館の大切さを感じました。

 

博物館やコンサートホールなどは特に維持費がかかるし、資金面でも運営面でも更にアーツマネジメントの重要性が高まると思いました。

 

今後、もっと情報が出てきて世界中でどんな動きがあるか見ていきたいと思います。

 

 

アメリカで秋の始まりを感じる

この数日間、朝5時頃のトレイルを軽く急ぎ足で歩いていると、涼しくて心地が良いです。でも、それと同時に秋特有の寂しさみたいなものを感じる。

 

8月だけどちょうど立秋の時期でもあり、アメリカでも日本に居るような秋の訪れを感じることができるのには感動します。(在米5年目なのに、、今までは余裕がありませんでした笑)

 

 

秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる

                          藤原 敏行

 

 

”秋の訪れはまだはっきりと目に見えているわけではないけど、夏とは違う秋の風を感じられる” というこの和歌がピッタリな朝だと思いました。

 

勉強とか仕事に気を取られていると、こういうささやかな変化を逃してしまうので、もっと肩の力を抜いて生活したいです。

 

もし緯度が全然違うところに住んでいたら、もっと違うことを感じるんだろうな~。

日本で習った中国の文化

 

英語を使って生活するようになってから、母国語の日本語はもちろん、色んな言葉に興味を持つようになりました。

 

先日、中国人の友達とお互いの国の教育について話していると、日本人は中学や高校で現代文・古文のほかに漢文も習うのに対して、中国出身である友達は漢文を習ったことが無いと言います。

かなり驚きました。

で、何を習うのかと聞くと英語が中心だとのこと。

日本で当たり前のようにやっていた習字も、必修科目ではないので習い事として塾へ行かなくてはならないらしい。

お隣の国で、文化面において影響を受けているはずなのに違うことが沢山ある。

 

中国は大学受験が大変という話を聞いたことがあったけど、クラスメイトは高校の授業が終わったら夜の10時まで学校内で補修のようなクラスを受けていたそう。

 

国によって、教育制度は全く違うということに改めて気づかされました。

でも、伝統が失われつつある状況はどこでも同じなんだな。

 

季節の認識

秋はどうしても、季節のことを考えてしまう。

世界で最初に季節の観測を始めたのは、古代中国だそう。古代のギリシャよりも先に季節の現象を分析していて、その季節の認識に影響された日本では「万葉集」や「古今和歌集」が誕生したのだから、すごい。

 

アメリカの音楽を聴いてアメリカのご飯を食べていても、時折日本の芸術文化に触れると、穏やかな気持ちになれる。やはり、私は日本人なんだなと感じる。

 

写真は、中国人クラスメートが作ってくれた中華料理。

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バディボールデンの家をめぐって ~歴史的建造物の保存∼

数日前にジャズの評論家/歴史家であるTed Gioiaのツイッターで、バディーボールデンがかつて音楽家として住んでいた家についての記事を見つけた。

 

 

ニューオリンズはジャズの発祥の地としての観光事業に毎年約1千万円を投じているようだが、市議会委員のJay H. Banksはバディーボールデンの家の保存は考えていないという。

 

ニューオリンズのテレビ局はこれに対して、家の周辺の人の意見を映した動画を出しています。

www.wwltv.com

 

 バディーボールデンは、「ジャズと呼ばれる音楽を作った人物」だと言われてはいるものの、実際に彼の演奏していたレコーディングは発見されていません。しかし、彼の演奏を聞いて育ち、ジャズを演奏するようになったミュージシャンからの貴重な証言や、現存する最古のジャズバンドの写真の中に彼が写っているということから、彼が演奏していた音楽がジャズの起源と言われています。

バディボールデンのコルネットの音はかなり大きかったため、この家の入り口にある階段に腰かけて練習をしていたそう。彼の周りには、小さな子供たちが集まり「キングボールデン!」と言いながら演奏を楽しんでいました。

 

そんなバディボールデンの家は、向かいにあるバプテスト教会が2008年に買い取っていますが、保存のための補修などは行われず、現在かなり劣化が進んでいます。

 

Ted Gioiaがツイートしたことにより、Jay H. Banksが8月24日にプレスリリースを発表しました。ニューオリンズでは過去に取り壊しをした歴史的建造物もあることから、今後はそのような事が起きないようにする方針で、バディボールデンの家をジャズの歴史の一部であることも理解してくれている様子。

 

https://pbs.twimg.com/media/DlZmojvU8AAw2jb.jpg

https://pbs.twimg.com/media/DlZmojvU8AAw2jb.jp

 

 

そしてTed Gioiaのツイートによって、それに反応を示したWynton Malsalisが市議会委員と直接電話で話をしたようです。

 

 

 

 

このようなやりとりがツイッター上で行われるのは、現代らしい動きだなと思いました。

 

まだ、ジャズ歴史にまつわる証言や現物が残っている現在。これらを残して後世に伝えていくのも今の時代のジャズに関わる人たちの役目だなと思います。

【スミソニアン特集⑥】私のインターン体験を振り返って。

スミソニアン特集①アーツマネジメントの世界で働くプロたち

スミソニアン特集②どんな仕事をしてるの?

スミソニアン特集③どんな展示物が見られるの?

スミソニアン特集④博物館の楽器倉庫は宝の山?!

スミソニアン特集⑤オーディオツアー 

スミソニアン特集⑥私のインターン体験を振り返って。

 

 

 スミソニアンでのインターン、最後の週。

毎日通っていたのでちょっと寂しくもあります。

本当に忙しい部署で、ジャズ関係の仕事のほかに秋の大イベント「Food History Weekend」の準備もかなり手伝わせてもらいました。(アメリカは移民の国ということで、移民から伝わった食文化が沢山あります。エスニックフードを作るシェフたちを招いてクッキングデモや歴史を学べるイベントを行う予定。)

 

さっそく秋から始まるインターンシップの説明会までの待ち時間を利用して

今回は、スミソニアンでの経験を通して感じたことや学んだことをシェアしたいと思います。

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国立の博物館として背負っているもの

どんなイベントを企画するときも、まずはじめに考えるのはコミュニティーに対して何を提供したいか?それはなぜか?ということ。国立の歴史博物館ということもあって、アメリカ国内はもちろん世界中から注目を集めています。

 

ツイッターやインスタグラムで発信することは偏っていないか、事実を伝えているのかなど、常に気を使いながら世の中に情報を提供しています。そのため、メディア発信・コミュニティーリーチに特化した部署がちゃんとあり、常に「国を代表している」という意識を持たなくてはいけないと感じました。

 

企画において大切なこと

私のいた部署は、歴史の修士をとった人が多くいます。歴史博物館なので当たり前なのかもしれませんが、キュレーターと共に話し合いを何度も重ねてエキシビジョンやイベントの準備をしていきます。

 

一つのイベントに対して長いもので半年以上の準備期間を要します。

例えば、ジャズプログラムの一環である世界ツアーは計10か国を回る予定で各国の会場の予約や現地の教育機関とのコラボレーションなどの話し合いを重ねていかなくてはなりません。

その間にもまず、ミュージシャン15~18人にスケジュールや給料の交渉をしたり、移動手段の確保、現地の宿泊先の予約・・・とにかく沢山決めることがあります。


もちろんツアーの成功も大切なことですが、ジャズという音楽を使ってどのように他国とコミュニケーションをとるか、寄付してくれる団体にとってプラスになる企画なのか、予算はクリアしているのか、、決めることは山積みでした。

こういったことは、授業の中でなく実際にその立場になってみないと知ることはできなかったと思います。

 

インターンを通して得たもの・学んだこと

スミソニアンは1846年にアメリカの連邦議会によって創設され、予算の7割を政府の負担で運営する国立機関ではありますが、その他はトラストファンドで賄っている非営利団体でもあります。インターン中には、寄付をしてもらっている団体への交渉に立ち会うこともあり、非営利団体を運営する大変さを目にしました。
スミソニアンのような歴史のある機関でさえ運営費の獲得には常に苦労することもあり、その現状を間近で見た経験は今後関わるであろう非営利団体での活動に生かされると思います。


オーディオエンゲージメントの部署は、まさにコミュニティーと団体を繋ぐ架け橋だと思いました。イベントを実際に運営して参加者の反応をみることができるし、その結果を次のプログラム開発にどうつなげていくかが重要になってきます。
ソーシャルネットワーク上での反応も、大切な決断要素だということを知りました。

 

 そして、部署の中で2人が同じタイミングで辞めてしまうという(2人とも仕事のステップアップで新しいポジションに就く)自体に遭遇したのも衝撃的でした。連邦政府の職員として雇われるようで、その仕組みが古いので新たな雇用は時間がかかるそう。そのため、インターンである私にも重要な仕事が回ってきたりして、ある意味貴重な体験をしました。

 

今後について思うこと

将来、政府の機関で働くかは分かりませんが国の機関の中で働くという体験は驚きの連続でした。非営利団体としてのリアルな実態をこの目で見ることができたし、今後勉強を続けていくうえでの参考になりそうです。

大学院生活ものこり1年。チャンスを逃さないように、日々もっといろんなことに挑戦していきたいと思います。